変動金利が年2.00%まで上がるとしても、それだけで固定への変更が得になるわけではありません。たとえば、変動金利が毎年0.25%ずつ上昇して5年目に年2.00%になり、その後は上がらない場合、今回の試算では10年固定の損益分岐点は約1.72%です。この条件では、固定金利がそれより高ければ、変動を続ける方が20年の総返済額は少なくなります。
では返済額はいくら増えるのか。残高2,000万円・残り20年のローンで、適用金利が年1.00%から年2.00%になると、毎月の返済額は91,979円から101,177円へ。毎月9,198円、年間では110,376円増える計算です(増加率10.0%)。
ただし、すでに返済中のローンは、この額がそのまま、すぐに請求されるとは限りません。5年ルールを採用している銀行では返済額が据え置かれますが、その間も利息は増えます。
なお、年2.00%は「住宅ローンの適用金利がそうなったら」という仮定で、日銀の政策金利の話ではありません。
金利が上がると返済額はいくら変わる?(残高2,000万円・残り20年の試算)
試算の前提は次のとおりです。住宅ローン残高2,000万円、残り返済期間20年、いまの適用金利は年1.00%と仮定します。元利均等返済でボーナス払いなし、月額は円未満を四捨五入、年間の増加額は月額で計算した年額(月額×12)の差です。
| 適用金利 | 毎月の返済額 | 毎月の増加額(年1.00%から) | 年間の増加額(年1.00%から) |
|---|---|---|---|
| 年1.00% | 91,979円 | 基準 | 基準 |
| 年1.25% | 94,227円 | 2,248円 | 26,976円 |
| 年1.50% | 96,509円 | 4,530円 | 54,360円 |
| 年1.75% | 98,826円 | 6,847円 | 82,164円 |
| 年2.00% | 101,177円 | 9,198円 | 110,376円 |
この表は「各金利がいまから残り20年続き、返済額を再計算した場合」の数字で、次の損益分岐点の試算(金利が段階的に上がる想定)とは別の計算です。実際の既存ローンは、見直しの基準日、5年ルール、残高の減り方で動くので、同じ額になるとは限りません。
新規向けの表示金利(たとえば三菱UFJ銀行の変動金利は年1.195%、2026年10月借入)は、返済中の人の適用金利とは限りません。
固定の損益分岐点の試算(変動と10年固定)
固定にした金利がいくらなら、変動を続けた場合と20年の総返済額が等しくなるのか。その水準が損益分岐点です。次の条件で計算しました。
- 残高2,000万円・残り20年、元利均等、ボーナスなし、年1.00%スタート(年1.00%は仮定)
- 変動は毎年0.25%ずつ上がって5年目に年2.00%になり、その後は年2.00%のまま
- 変動は5年ごとに返済額を見直し、増額は直前の返済額の125%まで(5年ルール・125%ルール。仕組みは後述します)と仮定
- 10年固定は、固定期間中の返済額を一定とし、11年目に変動金利(年2.00%)へ戻る時点で返済額を再計算する仮定
- 固定への変更手数料などの諸費用は含めていません
結果は約1.72%です。固定金利がこれより高ければ変動を続ける方が総返済額は少なく、低ければ固定の方が少なくなります。
これはあくまで上の仮定での計算で、実際の損益は、変更後の実際の金利、契約内容、10年後の金利で変わります。変動金利が年2.00%に届くのが早いほど、また上がる水準(10年後の金利を含む)が高いほど損益分岐点は上がり、届くのが遅いほど下がる、という方向だけは押さえておくと、銀行の見積もりを見るときの目安になります。
返済額がすぐ増えるとは限らない。5年ルール・125%ルールと利息
変動金利の金利の見直しは、銀行や契約によって毎月型・年2回型などの違いがあります。全国銀行協会は、金利の見直しは通常半年ごと、元利均等返済の返済額の見直しは通常5年ごとと説明しています。返済額の増加には、一般的に「125%ルール」と呼ばれる上限があり、増額は直前の返済額の25%までとされています。
この2つは法律の制度ではなく、各銀行の商品ごとの決まりです。たとえば三菱UFJ銀行の商品説明書(2026年10月1日現在)には、利率が変わっても見直しまでは返済額を変えず、見直しで増えても125%を超えない、と書かれています。
今回の試算で最大の増加率は10.0%。25%の上限にはまだ届きません。上限が効いてくるのは、金利が大幅に上がったときです。
ここで気をつけたいのが利息です。返済額が据え置かれても、金利が上がれば利息は増えます。同じ返済額のうち利息の割合が増え、元金の減りが遅くなる。三菱UFJ銀行の商品説明書も「元金と利息の内訳は変わります」と書いています。
さらに、三菱UFJ銀行の商品説明書では、利息が毎回の返済額を上回ると、超えた分は未払利息として翌月以降に繰り延べ、最終返済日に残高が残れば原則その日に一括返済、とされています。楽天銀行も、適用金利が大幅に上昇すると返済額のほとんどが利息に充てられ、融資残高が減らず未払利息が発生することがあると説明しています。
ルールは利息を免除してくれるわけではありません。ソニー銀行のページにも「増えた利息の支払が免除されるわけではない」という趣旨の説明があります。返済額が増えないから安心、ではなく、見えにくい形で利息の負担が増えていきます。
銀行によってルールは異なります。三菱UFJ銀行・楽天銀行・auじぶん銀行はルールを採用していて、ソニー銀行は導入していません。自分の契約書か商品説明書で確かめるのが確実です。元金均等返済のローンはそもそも対象外で、毎月の返済額が変わっていきます。
金利はこの先どうなる? 政策金利と住宅ローン金利は別物
利上げの仕組みやローン金利への反映時期の基礎は、利上げって結局なに?金利が上がる仕組みをやさしく解説で書いています。
日銀の政策金利は、2026年9月18日の決定(9月24日適用)で1.25%程度になりました。直前は1.0%程度で、引き上げ幅は0.25%です。
住宅ローンの変動金利は、この政策金利そのものではありません。各銀行が短期プライムレートなどを基準に決めていて、短期プライムレートは銀行が自主的に決める金利です(日銀の統計ページの説明)。政策金利が上がれば同じ幅だけ必ず上がる、とは言い切れません。
時間差の具体例です。三菱UFJ銀行は、日銀の決定と市場金利の上昇を受けて、短期プライムレートを2.375%から2.625%に引き上げます(改定日は2026年11月2日)。住宅ローンの基準金利の見直しは2026年12月1日。既存の借り手の適用金利に反映されるのは、毎月型が2027年2月の約定返済分、年2回型が2027年7月約定返済分からです。元利均等返済なら、返済額そのものは5年ごとの見直しまで変わりません。
政策金利の先行きは予想で、確定した話ではありません。以下は2026年10月12日時点のものです。
野村證券の森田氏(2026年9月24日公開)は、メインシナリオ(確率60%)で2026年12月、2027年3月の利上げを予想していて、到達点は1.75%。2.00%に届くのはリスクシナリオ(確率30%)です。第一生命経済研究所の新家氏(2026年9月18日公開)は、12月に1.50%、2027年3月に1.75%、6月に2.00%と予想しています。見方は割れています。
OISという市場データが織り込む10月の利上げ確率は18%程度(2026年10月8日時点、外為どっとコム総研の小野氏の記事による)にとどまっています。
固定に変える場合に確認すること
返済中に固定へ変えるときの金利は、新規向けに案内されている金利(三菱UFJ銀行の固定10年なら年3.75%、2026年10月借入)とは限りません。この金利で切り替えられると考えると、ずれることがあります。三菱UFJ銀行の既存借入者向け資料(契約書が「消費者ローン契約書」の場合の例)では、申し込んだ月の新規向け店頭表示金利(金利引き下げなどを使わない場合の利率)が基準になり、実際の利率は利用中の金利コースや保証料の支払い方法で異なる、と書かれています。変更後に実際に適用される金利は契約ごとに違うので、この記事では見積もりません(上の損益分岐点の試算は、固定金利がいくらなら総返済額が変動と並ぶかの目安です)。銀行に見積もってもらうのが確実です。
ドコモSMTBネット銀行(旧住信SBIネット銀行)の対面相談コースの金利一覧(2026年10月の新規借入向け)では、通期引下げプランで借りた場合の変動→固定変更時の引下げ幅が年-1.700%とされています。引下げ幅は契約によって違います。
条件も銀行で違います。三菱UFJ銀行の例(商品説明書、2026年10月1日現在。現在の商品の条件で、借入時期によって契約内容が違うことがあります)だと、変更は約定返済日に限られ、返済が遅れている間は固定にできません。固定期間中は変動に戻せず、期間が終わると自動で変動に戻ります。全期間固定は借入時にしか選べません。手数料はインターネットなら無料、窓口なら11,000円です。固定に変えると、返済額はその時点で再計算されます。
auじぶん銀行は、返済日の原則10日前までに連絡するよう案内しています。ほかの銀行は条件が違うため、契約している銀行の説明を見てください。
切り替え時の審査の有無も、銀行に確認しておきましょう。「審査なしで変えられる」とは限りません。借り換えとは別の手続きですが、借り換えは新たな審査と諸費用が必要です。
返済額が安定する面もありますが、いまの変動金利より高い金利で固定することになる可能性があり、固定期間中は戻せません。
変動のまま返済するなら確認しておくこと
変動のまま続ける場合も、自分の契約書や返済予定表で次の点を見ておくと、金利が動いたときに慌てずに済みます。
- 元利均等か、元金均等か
- 5年ルール・125%ルールがあるか。あるなら次の見直し基準日はいつか(三菱UFJ銀行の例では、借入日(または固定期間の満了日)の翌日以降5回目の10月1日、以後5年ごとの10月1日)
- 金利見直しは毎月型か年2回型か
- 適用金利と、基準金利から引かれている引下げ幅
- いまの返済額のうち利息がいくらで、元金がどのくらい減っているか
そのうえで、返済額の表を自分の残高・残り期間・適用金利に置き換え、もう一段上がったときの毎月の増額分が家計に収まるかを見積もります。
まとめ
表で返済額の幅を知る。契約の5年ルールと見直し基準日を確認する。固定を考えるなら、変更後の金利と手数料を銀行に見積もってもらう。この3つが先です。
今回の試算条件では、10年固定の損益分岐点は約1.72%です。例えば、変更後の10年固定金利が年2.00%だった場合、変動を続ける方が20年間の総返済額は少なくなる計算です。ただし、変動金利が年2.00%を超えて上がる場合や、金利の上昇が早い場合は結果が変わります。
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参考リンク
- 全国銀行協会「変動金利住宅ローンの未払利息とは?」 https://www.zenginkyo.or.jp/article/tag-d/7824/
- 三菱UFJ銀行「住宅ローン」商品説明書(2026年10月1日現在) https://www.bk.mufg.jp/kariru/jutaku/shouhin/jloan/pdf/jl_setsumei_02.pdf
- 三菱UFJ銀行 既存借入者向け「金利について」 https://www.bk.mufg.jp/kariru/jutaku/kuriage/pdf/btm.pdf
- 三菱UFJ銀行「変動金利の基準金利見直しについて」 https://www.bk.mufg.jp/info/hendoukinri5.html
- 三菱UFJ銀行「短期プライムレートの改定について」 https://www.bk.mufg.jp/news/news2026/pdf/news0918.pdf
- 楽天銀行「5年ルール・125%ルール」 https://www.rakuten-bank.co.jp/home-loan/terms/5nenrule/
- ソニー銀行「5年ルール・125%ルール」 https://sonybank.jp/tool/movie/hl08.html
- 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日) https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf
- 日本銀行「長・短期プライムレート(主要行)の推移」 https://www.boj.or.jp/statistics/dl/loan/prime/prime.htm
- 野村證券 NOMURA ウェルスタイル(2026年9月24日公開) https://www.nomura.co.jp/wealthstyle/article/0886/
- 第一生命経済研究所(2026年9月18日公開) https://www.dlri.co.jp/report/macro/665928.html
- 外為どっとコム マネ育チャンネル(2026年10月10日公開) https://gaitame.com/media/entry/2026/10/10/060200
- 三菱UFJ銀行 住宅ローン(新規の表示金利) https://www.bk.mufg.jp/kariru/jutaku/index.html
- ドコモSMTBネット銀行 金利一覧(SBIマネープラザ) https://lp.sbi-moneyplaza.co.jp/common/pdf/mr_rate-variable_202610.pdf
- auじぶん銀行 住宅ローン https://www.jibunbank.co.jp/products/homeloan/
- auじぶん銀行 住宅ローン契約者向け https://www.jibunbank.co.jp/products/homeloan/contract/

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