以下は検証前の図です。OpenAI・Grokの記載には誤りがあります。

※これはAIに作らせた検証前の図です。OpenAIとGrokの分類はどちらも誤りでした(詳しくは本文で)。正確な内容は記事末尾の確定版を参照してください
先週、Google・OpenAI・Grok・Adobeの画像に入る「透かし」の違いを1枚の図にまとめてもらいました。Geminiに指示を出して、待つこと1分。出てきた図が思ったより綺麗で、そのままXに貼るつもりでいたんです。
念のため中身を見返したら、1箇所引っかかりました。OpenAIの欄に、Googleの独自技術のはずの「SynthID」が書かれている。「これは違うでしょ」と思って、直してもらいました。
ところが、話はここからでした。
この記事は画像生成そのものではなく、AIの出力をそのまま信じるとどうなるか、そして投資の情報でそれをやったらどうなるかの話です。
もし記事が少しでも参考になったら、応援クリックしていただけるとうれしいです。
見た目の完成度と、中身の正しさは別々に作られている
先に結論を書きます。
AIの出力は「もっともらしさ」と「正しさ」が別のルートで作られていて、前者だけが高い状態が普通に起きます。表の体裁が整っているとか、専門用語が自然に使われているとか、そういう手がかりは正しさの保証になりません。
頭では分かっているつもりでした。でも今回困ったのは、AIを疑う側の自分の知識にも同じことが起きていた点です。分かっているつもりの私が、間違った図をXに貼りかけていました。
実際に何が違っていたか
Geminiの最初の図には4社が並び、OpenAI欄には「SynthIDとC2PA」「追跡性能は強固」と書かれていました。
「SynthIDはGoogleの技術では」と、典型的な取り違えに見えました。そこで私は、この欄は誤りだと伝えて直させました。
Geminiは修正のたびに別の箇所を崩し、最終的にOpenAI欄を「C2PAメタデータのみ、スクリーンショットで消える」と書き換えました。ChatGPT版も同じ結論になりました。

左が修正前、右が私の指示を受けて直した後です。結果として、OpenAI欄は修正前の方が実態に近い内容でした。
記事冒頭の簡略版にも、この誤った内容がそのまま入り、あとはXに投稿するだけのはずでした。
ところが、投稿前にもう一度調べると話が違いました。OpenAIは2026年5月19日、ChatGPT・Codex・APIで生成する画像に、C2PAのContent CredentialsとGoogle DeepMindが開発したSynthIDを併用すると発表していました。
C2PAは画像の出所や作成・編集履歴を詳しく記録できますが、形式変換やサイズ変更、スクリーンショットなどでメタデータが失われることがあります。SynthIDは画像自体に不可視の信号を埋め込み、メタデータが残らない場合にも手がかりを残す仕組みです。OpenAI Help Centerは、両者を補い合う多層構成と説明しています。(2026年7月26日時点)
つまり、Geminiが最初に出した「OpenAI = SynthID & C2PA、追跡性能は強固」は、技術の組み合わせとしては事実のとおりでした。私が「間違ってる」と判断して直させた結果、AIたちが自信満々に仕上げてきた検証前の最終版の方が、実は誤りでした。
「知っている分野だから気づけた」の方が、実は間違っていた
私が違和感を持てたのは、SynthIDの開発元を覚えていたからです。でも、その記憶は数ヶ月前のものでした。AI業界の提携や技術採用は短期間で変わります。自分の記憶だけが更新されないまま、正しい出力を誤りだと判定した。これが今回の実態です。
知らない分野なら、そのまま素通りしていたかもしれません。中途半端に知っていたから、わざわざ手を入れて間違えた。知識そのものではなく、「いつの情報か」を確認せずに使うことが危ないんだと思います。
これが銘柄の話だったら、と考えてみる
今回は画像の透かしの話なので、間違えても直接お金が減るわけではありません。
でも同じことが決算数字で起きたらどうなるか。AIが最新の数字を出しているのに、「この銘柄の配当性向はもっと低かったはずだ」と古い記憶で直させる。整った表にされると、修正後の方が正しく見えてしまいます。図なら貼り直せますが、約定は取り消せません。
私自身、過去に買い増しを繰り返して大きな含み損を抱えた経験から、事前にルールを決めるようになりました。判断は自分でする。ただし、その判断の土台になっている記憶も、定期的に洗い直す必要があると今回気づきました。
同じ図を2つのAIに作らせたら
Geminiとのやり取りで固まった比較項目と修正内容を、一度の指示にまとめてChatGPTにも渡しました(普段使っているGoogle AI Proについてはこちら)。
Gemini版には小さな◇マークが焼き付けられ、ChatGPT版にはありません。同じ内容を求めても、図の性質からすでに道具の違いが出ていました。
※この図も検証前のものです。OpenAI欄のほかにも不正確な箇所があります。正確な内容は記事末尾の確定版を参照してください
Geminiは1箇所直すと別の箇所が崩れ、6版まで増えました。ChatGPTは条件をまとめて渡したため1回で形になりましたが、OpenAI欄は誤ったままでした。
しかも両方とも、私の「ここは間違っている」という前提を疑いませんでした。今回の比較で見えたのは優劣ではなく、AIは指示する側の勘違いまで律儀に形にしてしまう、ということです。
OpenAI欄以外にも誤りがありました。Grokは「マークなし」とされていましたが、xAI公式FAQでは、アプリ・Web版の生成画像や動画に透かしが入り、外す設定もないと説明されています。不可視の技術は非公表です。1箇所直して安心した時点で、私は確認をやめていました。
Adobeは、Fireflyの100%生成画像にContent Credentialsを自動付与する点は公式ヘルプどおりでした。ただし、直接埋め込んだ情報は投稿先によって失われる場合があります。別のAdobe Content Authenticityは、クラウド・不可視透かし・デジタル指紋も使います。この区別が図では抜けていました。
版が5つ6つと増えると、どれが初版でどれが修正版か、自分でも分からなくなりました。修正版はどれも同じくらい"それっぽく"見えます。見た目と正しさが別々に作られる問題は、1回の出力だけでなく、版を重ねる途中でも起きるようです。
結局、4社すべてを一次情報で確認し、確定版はAI画像生成ではなくmatplotlibで作り直しました。Xに投稿したのはこちらです。

私がAIに投資の話を聞くときにやっていること
今回の失敗を踏まえて、普段の使い方を整理しました。
- 数字は必ず一次情報で確認する。決算短信、IR資料、証券会社の画面。AIの出した数値をそのまま記事や判断に持ち込まない
- AIには「答え」ではなく「論点」を出させる。弱点や見落としを探す用途なら、多少ずれても実害が出にくい
- 固有名詞が出たら疑う。同時に、自分が「知っている」と思う情報がいつのものかも確認する
3つ目は今回追加したものです。AIの固有名詞を疑うだけでは足りず、それを判定する自分の知識にも賞味期限がありました。
AIを使わない、という結論にはならない
私はAIを手放すつもりはありません。今回も最終的には正しい情報にたどり着けましたし、ゼロからAIなしで図を作っていたら半日は溶けていたはずです。
速く形にする力は本物です。ただし、それは検証の速さではありません。作る時間が短くなった分、AIの出力だけでなく、自分の「こうだったはず」まで確認する必要が出てきたんだと思います。
まとめ
AIの出力は、見た目の完成度と中身の正しさが別々に作られます。今回はそこに、自分の古い記憶まで重なりました。「知っている分野だから気づける」とは限らず、正しい出力をこちらが誤りに変えてしまうこともあります。
投資で使うなら、数字は一次情報で確認する。固有名詞は疑う。そして、自分の記憶がいつの情報かも疑う。この3つは崩さないでおこうと思います。
自分の判断の方が間違っていたと分かると、正直けっこう凹みます。でも、気づかず投稿するよりずっとましです。AIが出したものだけでなく、それを「間違ってる」と判定した自分の側も、一度止まって見返すことにします。

コメント