2026年7月、日経平均はなぜ8%下がった? TOPIX・米国株との違いを初心者向けに解説

投資の気づき

2026年7月、日経平均株価は月間で8%あまり下落しました。一方、TOPIXはほぼ横ばいで、米国のS&P500も小幅な下落にとどまりました。

結論からいうと、「7月だから下がった」のでも、ひとつのニュースだけで下がったのでもありません。

7月の値動きは、次の3つの経路から整理できます。

  1. 中東情勢・原油と、インフレ・金利への警戒を結び付けて見る経路
  2. FOMC・日銀会合と、同時期の金利・為替の変動を見る経路
  3. 企業決算・AI投資への評価が、半導体株や値がさ株の市場材料になる経路

中東情勢・原油、金融政策、企業決算の三つの経路が日経平均の値動きに関係する構造図

記事内の整理を示す図であり、各経路の寄与割合や単独の因果関係を示すものではありません。

この3経路が同じ時期に重なったうえ、日経平均は一部の値がさ株の影響を受けやすい指数です。この材料の重なりと指数構造が、TOPIXや米国株との差を考える重要な手がかりです。

この記事では、確認できた事実と、市場報道による解釈、筆者の見方を区別しながら整理します。

まず確認したい、7月の4指数の動き

以下は、2026年6月30日終値から7月31日終値までの騰落率です。いずれも配当を含まない価格指数を現地通貨建てで比較し、計算式は「(7月31日終値 ÷ 6月30日終値-1)×100」としています。数値は2026年8月2日に確認しました。

指数 6月30日終値 7月31日終値 騰落率
日経平均株価 70,062.32 64,362.02 -8.14%
TOPIX 4,010.88 4,003.30 -0.19%
S&P500 7,499.36 7,489.72 -0.13%
NASDAQ総合指数 26,213.72 25,373.85 -3.20%

出典:日経平均(日経平均プロフィル)TOPIX(JPX)TOPIX過去データS&P500(FRED)NASDAQ総合指数(FRED)

2026年7月の4指数の騰落率。日経平均マイナス8.14%、NASDAQ総合指数マイナス3.20%、TOPIXマイナス0.19%、S&P500マイナス0.13%

2026年6月30日終値から7月31日終値。配当なし、現地通貨建て。出典:日経、JPX・確認済み市場データ、FRED。

ここで使う米国ハイテク株の比較指数は、NASDAQ総合指数です。NASDAQ市場に上場する幅広い銘柄を含む指数であり、NASDAQ100とは別の指数です。

また、すべて現地通貨建てなので、日本の投資家が円で受け取る損益をそのまま比べたものではありません。為替の影響や配当も含まれていません。

この数字から確認できるのは、「7月は世界の株式市場が一様に8%程度下がったわけではない」ということです。日経平均とほかの指数との差を考える際には、日本固有の材料と指数の構造を分けて見る必要があります。

日経平均とTOPIXで、なぜこれほど差が開いたのか

日経平均とTOPIXは、どちらも日本株の代表的な指数ですが、作り方が違います。

日経平均は、225銘柄の株価を、株式分割などの影響をならす係数で調整して計算する「株価平均型」の指数です。時価総額ではなく、この調整後の株価水準が高い「値がさ株」ほど、指数を大きく動かしやすい特徴があります。

一方のTOPIXは、東証の幅広い銘柄を対象に、市場で実際に売買される株式を考慮した時価総額で重み付けする指数です。大型株の影響は受けますが、日経平均ほど一部の値がさ株に偏りにくい構造です。

値がさ株の影響を受けやすい日経平均と、時価総額で重み付けするTOPIXの違い

指数の算出方法を初心者向けに簡略化した図です。出典:日本経済新聞社、JPX。

この違いがはっきり表れたのが、7月24日でした。

日本経済新聞社の7月24日の日次サマリーによると、日経平均は前日比1,811.45円安の64,611.15円で取引を終えました。このうち、業種別寄与度で「技術」はマイナス1,572.18円でした。単純計算では、その日の下落幅の約86.8%に相当します。

これは「技術関連企業が日本株全体の86.8%を占める」という意味ではありません。その日に日経平均が下がった幅のうち、技術分類の銘柄が押し下げた分を示す数字です。

同日時点で、日経平均に占めるアドバンテストの構成比は10.81%、東京エレクトロンは9.75%でした。技術セクター全体の構成比は56.04%です。半導体を含む値がさ株がまとまって下がると、日経平均には大きな下押し圧力がかかります。

一方、TOPIXの月間騰落率はマイナス0.19%でした。したがって、7月の日経平均の下落を、そのまま「日本企業全体が同じ程度下がった」と受け取るのは正確ではありません。

指数と自分の保有株の値動きが違う理由は、関連記事「日経平均は最高値なのに、なぜ私の株は上がらない?半導体集中相場の落とし穴」でも整理しています。

「織り込み」とは、予想との差で価格が動くこと

3つの経路を見る前に、「織り込み」という言葉を簡単に確認しておきましょう。

株価は、発表された事実だけではなく、発表前に投資家がどのような結果を予想していたかでも動きます。好決算でも期待ほど良くなければ下がり、悪い数字でも予想ほど悪くなければ上がることがあります。

このように、市場の予想があらかじめ株価に反映されていくことを「織り込み」といいます。7月の値動きを理解するには、「良いニュースか、悪いニュースか」だけでなく、「事前の期待との差」を見ることが大切です。

経路1:中東情勢・原油から、インフレと金利観測へ

最初の経路は、中東情勢と原油価格です。

米国エネルギー情報局(EIA)の同一系列によると、北海ブレント原油の現物価格(スポット価格)は、6月30日の1バレル70.46ドルから7月20日の86.99ドルへ上昇しました。上昇率は約23.5%です。

ただし、原油価格は7月を通じて一直線に上がったわけではありません。AP通信によると、7月23日には最も取引の多いブレント原油先物が100.69ドルで取引を終えました。7月27日には10月限が85.87ドルで終了し、前営業日から6.3%下落しました。契約条件が異なるため、100.69ドルと85.87ドルをそのまま連続した値として比較はできませんが、7月後半も上昇と下落の両方があったことは確認できます。

原油高が株価に影響する一般的な経路は、次のとおりです。

原油価格が上がると、輸送費や原材料費、家庭のエネルギー負担が増えやすくなります。物価上昇が長引くとの見方が強まれば、中央銀行が金利を高めに保つとの予想につながります。

金利は、簡単にいえば「お金を借りるときの価格」です。金利が高い状態では、企業の資金調達負担が増え、将来の利益を現在の価値に置き換えたときの評価も低くなりやすいため、株価の重しになる場合があります。

日銀の7月の展望レポート基本的見解も、原油価格の上昇が企業収益を押し下げ、家計の実質所得に悪影響を及ぼす可能性に触れています。

ここまでが確認できる一般的な経路です。一方、7月の日経平均の下落幅のうち、原油だけが何円分を占めたかは確認できません。原油は重要な材料のひとつですが、単独の原因とは判断できません。

経路2:FOMC・日銀会合から、金利と為替へ

2つ目の経路は、米国と日本の金融政策です。

政策金利は、中央銀行が物価や景気を調整するために示す短期金利の目安です。FOMCは、米国の金融政策を決める会合を指します。

米連邦準備制度理事会(FRB)の声明によると、7月28~29日のFOMCでは政策金利の誘導目標を3.50~3.75%に据え置きました。採決は9対3で、3人は0.25ポイントの利上げを支持しました。

FREDの日次系列では、米国の10年国債利回りは7月28日の4.61%から29日の4.67%へ0.06ポイント上昇しました。同じ29日にS&P500は1.52%、NASDAQ総合指数は1.74%下落しましたが、翌30日のNASDAQ総合指数は2.78%上昇しています。

この動きから、FOMCと金利が市場の重要材料だったことは分かります。ただし、同時期には原油やAI関連株の材料も重なっていました。日付が同じというだけで、株価変動のすべてをFOMCの結果に結び付けることはできません。

日銀の7月31日の公表文によると、7月30~31日の金融政策決定会合では、金融機関同士が一晩だけ資金を貸し借りするときの金利である無担保コールレート翌日物を1.0%程度に据え置きました。採決は8対1で、1人は1.25%程度への引き上げを提案しました。

為替市場では、日銀公表の外国為替市況における17時時点の中心相場で、1ドル=163.735円だった7月30日から、31日には160.210円へ円高・ドル安が進みました。

為替は日本株、とくに輸出企業の見通しに影響します。円高になると、海外で稼いだ利益を円に換算した金額が小さくなりやすい一方、輸入する原材料やエネルギーの負担を和らげる面もあります。すべての企業に同じ方向で作用するわけではありません。

政策金利が預金・債券・株へ伝わる基本は、「日銀利上げで資産運用はどう変わる?初心者向けに預金・債券・株への影響を解説」で詳しく説明しています。

7月30~31日の為替変動について、為替介入があったかどうかは確認できていません。そのため、この記事では介入を株価下落の原因に含めません。

経路3:企業決算・AI投資への期待から、半導体・値がさ株へ

3つ目は、企業決算とAI投資への期待です。ここでは、記事の説明に直接関係するAlphabet、アドバンテスト、信越化学工業の3社に絞ります。

半導体企業ごとの役割を先に確認したい方は、「AI半導体相場はどこまで続く?キオクシア・東京エレクトロンだけじゃない関連分野を初心者向けに整理」も参考になります。

まず、確認できた決算と発表後の株価反応を比べてみましょう。

企業 確認できた決算・見通し 発表後の株価反応 この事例から分かること
Alphabet 売上高は前年同期比24%増、Google Cloudは82%増。一方、会社定義のフリーキャッシュフローはマイナス58億5,500万ドル 翌23日のAlphabet株は7.13%安 AI需要が伸びても、投資負担への評価で株価が下がる場合がある
アドバンテスト 売上高は39.3%増、営業利益は53.3%増。通期予想を上方修正 翌30日の株価は10.9%高 AI向け半導体需要への期待が業績と株価の両方に表れた例
信越化学工業 売上高は5.4%増、営業利益は4.2%増。通期純利益予想は市場予想を下回った 次の取引日である27日の株価は8.30%安 増収増益でも、今後の見通しが期待に届かなければ下がる場合がある

株価反応の出典:Alphabet(Financial Times)アドバンテスト(Yahoo!ファイナンス)信越化学工業(Yahoo!ファイナンス)

Alphabet:好調な売上と大きなAI投資を市場がどう見たか

Alphabetの決算では、売上高やクラウド事業が伸びる一方、AI関連を含む大きな設備投資でフリーキャッシュフローがマイナスになりました。ロイターはAI投資負担への警戒を株価下落の背景として取り上げています。

日本市場では、7月23日にアドバンテスト株が4.1%上昇し、Alphabetの設備投資による需要期待が材料として挙げられました。翌24日には同株が6.0%下落し、ロイターはAI投資への警戒が日本の半導体株にも波及したと報じています。

ただし、24日には原油や金利など別の材料もありました。Alphabetの決算だけで日経平均の下落全体を説明することはできません。

アドバンテスト:好決算でも、期待の変化で値動きが大きくなる

アドバンテストは7月29日の決算で増収増益となり、通期予想も引き上げました。翌30日の日経平均の反発を伝えたロイターも、同社の業績見通しを主要な市場材料として挙げています。日経平均での構成比が高いため、同社株の大きな値動きは指数にも表れやすくなります。

信越化学工業:「増益」と「市場の期待との差」は別

信越化学工業は増収増益でしたが、ロイターが示した通期純利益の市場予想を会社予想が下回りました。好決算でも、今後の見通しが事前の期待に届かなければ株価が下がる場合があるという「織り込み」の例です。ただし、会社予想だけが株価下落の唯一の原因だったとは断定できません。

なぜ米国株より日経平均の下落が大きかったのか

7月の米国株も無傷ではありません。NASDAQ総合指数は月間で3.20%下落し、FOMCやAI関連企業の決算も日々の市場材料になりました。

それでも、S&P500は月間0.13%安にとどまりました。S&P500は米国の大型株を幅広く含む時価総額加重型の指数です。NASDAQ総合指数も、特定の100社だけではなくNASDAQ市場の幅広い銘柄を対象にしています。

対して日経平均は、半導体を含む一部の値がさ株の影響を強く受けます。7月24日に技術セクターの押し下げ寄与が下落幅の約86.8%に相当したことは、その特徴を示す中心的な例です。

筆者は、7月の日経平均と米国株の差を理解するには、「日本の景気だけが急に悪化した」と考えるより、金融政策、為替、企業決算という複数の材料に、日経平均特有の構造が重なったと見るほうが実態に近いと考えます。

これは確認済みの指数データと個別材料を整理した筆者の見方であり、下落幅を統計的にすべて説明したものではありません。

初心者は、短期の下落をどう受け止めればよいか

指数が大きく動いたときは、値動きだけを見るのではなく、次の点を確認してみてください。

  • 保有する商品は、日経平均、TOPIX、S&P500、NASDAQ総合指数のどれに近い値動きをするのか
  • 半導体株や値がさ株など、特定の業種や銘柄に偏っていないか
  • 海外資産の場合、為替の影響をどの程度受ける商品なのか
  • 投資の目的と期間が、短期の値動きによって変わっていないか
  • 近く使う予定のお金まで投資に回していないか

日経平均が大きく下がっても、TOPIXや米国株が同じ幅で下がるとは限りません。反対に、日経平均が上がる局面でも、すべての日本株が同じように上がるわけではありません。

長期・分散を前提にしているなら、1日や1か月の値動きだけで計画を変える前に、自分が持つ商品の中身と投資目的を確認することが大切です。

まとめ:7月という月ではなく、材料の集中と指数の構造を見る

2026年7月の日経平均がTOPIXや米国株より大きく下落した背景は、ひとつのニュースでは説明できません。

  • 中東情勢と原油価格の変動を通じ、インフレと金利が市場で意識された
  • FOMCと日銀会合の前後で、金利と為替の変動が重なった
  • 企業決算とAI投資への評価の変化が、半導体株や値がさ株の市場材料になった
  • 日経平均は一部の値がさ株の影響が大きく、7月24日には技術セクターの下落寄与が目立った

重要なイベントと不確実な材料が短期間に集中しました。7月の値動きはこの3経路から整理できますが、各経路が下落幅の何%を占めたかまでは確認できません。「7月は必ず荒れる」と考える根拠もありません。

初心者ほど、目の前の下落だけで慌てず、「何が動いたのか」「自分の商品は何に連動するのか」を分けて考えることが大切です。

主な参照資料

免責事項

この記事は、公開情報をもとにした一般的な情報提供を目的としています。特定の金融商品の購入・売却を勧めるものではありません。投資判断は読者自身の責任で行ってください。


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