金融所得を社会保険料に反映?厚労省が検討開始。NISA・特定口座への影響をわかりやすく解説

投資の気づき

最近、厚生労働省が 「金融所得を税務調書で把握し、社会保険料へ反映することを検討する」 というニュースが流れました。

SNSでもかなり話題になり、

「投資の利益で社会保険料が上がるの?」
「NISAまで対象になるの?」

といった不安の声が広がっています。

この記事では、
・現時点でわかっている内容
・投資家としてどう受け止めるべきか
を、わかりやすく整理していきます。


現在の社会保険料は“給与収入”だけが対象です

まず前提として、いまの社会保険料は 給与収入(標準報酬月額) をもとに計算されています。

  • 基本給
  • 手当
  • 残業代

こうした 労働による収入 のみが対象で、

投資の利益(売却益・配当・利子)は現行制度では一切関係ありません。

ここを誤解しないことが大切です。


今回の議論は「仕組みづくりを検討する」段階

今回ニュースとして取り上げられた内容は、
「もうすぐ導入される」という話ではありません。

厚労省が議論しているのは、以下のステップです。

  1. 証券会社 → 国税 → 厚労省へ金融所得を連携できる体制整備
  2. そのうえで、保険料の算定に使うかどうか検討する

つまりこれは、

まだ“議論を始めたばかり”であり、制度化は全く決まっていません。

この点は強調しておきたいところです。


私が今回の議論に違和感を覚える理由

今回のニュースを知って、どうしても気になったことがあります。

それは、投資に回しているお金は、すでに社会保険料や税金が引かれた“手取り”から出ている という点です。

私たちは、

  • 給料から社会保険料が天引きされ
  • その残ったお金をやりくりして投資に回し
  • 利益が出れば20.315%の税金(所得税+住民税)を支払い

という流れで資産形成をしています。

そのうえで、今回のように
「投資の利益も、社会保険料に反映するかもしれない」
という議論が出てくると、どうしても違和感が残ります。

「これ以上どこまで負担が増えるのだろう…」

そんな不安を感じてしまうのは自然なことだと思います。


負担構造を見ると「二重課税+二重取り」に近い面も

投資家の間で今回の議論が大きな反響を呼んでいる理由のひとつが、
負担の仕組みが 実質的に“二重取りに近い” という点です。

実際の流れを整理するとこうなります。

  1. 給料 → 社会保険料が天引き
  2. 手取りで投資
  3. 利益 → 20.315%の税金
    4.(検討中)その利益をさらに「収入扱い」で保険料上乗せ?

こうして並べてみると、
同じお金に対して複数段階で負担が発生しているように見える のです。

だからこそ、

「これは実質的に“二重課税+二重取り”では?」

という意見が出るのも理解できます。

しかも投資の利益は毎年必ず得られるわけではありません。
マイナスの年だって当然あります。

利益が出た年だけ「収入扱い」で保険料が増えるなら、
損失が出た年はどう扱うのか?補填されるわけではない…

こうした不公平感を覚える人が多いのは自然なことだと思います。


NISAは対象?特定口座は?現時点での整理

■ NISAは原則“非課税”なので対象外の可能性が高い

NISAは国が「長期投資を促したい」という政策目的で作った制度です。
利益も非課税であるため、

NISAまで社会保険料の対象にする可能性は低い

とする意見が多いです。

ただし、制度確定までは断言できません。


■ 特定口座(源泉徴収あり)は“情報として扱いやすい”

一方で特定口座は、

  • 売却益
  • 配当
  • 分配金
  • 利子

これらが税務調書にまとまっています。

もし今回の議論が進むなら、
最も対象になりやすいのは特定口座側の金融所得 と言えます。


保険料がどれくらい増える可能性がある?

現時点で具体案はなく、数値はゼロです。

ただ、制度がもし導入されるなら、
年間利益が大きい人ほど影響が出ると考えられます。

とはいえ、これはあくまでも専門家の推測レベルであり、
実際にどうなるかは今後の議論次第です。


制度化までのハードルは高く、時間もかかります

現時点では、制度化へのハードルはかなり高いと言えます。

▼ 反対意見が非常に多い

  • 投資を冷え込ませる
  • NISAの成長と矛盾
  • 老後資金形成への逆風
  • 中間層の負担増

▼ システム面や制度面の整備が大変

  • マイナンバー連携
  • 税務調書の集約
  • 給与との合算計算
  • 企業側のシステム変更

これらをクリアするには時間がかかります。

数年先になるか、そもそも制度化されない可能性も十分にあります。


投資家として今やるべきこと

結論として、今の段階で投資方針を変える必要はありません。

  • 制度はまだ“検討の入口”
  • NISAはおそらく対象外
  • 特定口座も当面は影響なし
  • 今すぐ保険料が上がる可能性はゼロに近い

そのため、今やるべきことはシンプルです。

  • 最新情報を追う
  • NISA中心で長期投資を続ける
  • 特定口座の利益は将来の制度変化を視野に入れておく

これだけで十分です。


まとめ

  • 厚労省が「金融所得を保険料に反映する」検討を開始
  • ただし“制度化”ではなく、まずは仕組みづくりの議論
  • 投資家には負担の構造が二重取りに見える部分があり慎重な声が多い
  • NISAは対象外の可能性が高い
  • 特定口座が議論の中心になる可能性
  • 実現は数年単位で、導入されない可能性も
  • 今は慌てて投資方針を変える必要なし

今後も情報が更新され次第、この記事をアップデートしていきます。


もし内容に誤りや気になる点がありましたら、ぜひコメントで教えてください。皆さまのご指摘やご意見が、記事の品質向上につながりますので大変ありがたいです。


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コメント

  1. 通りすがり より:

    詳しい記事ありがとうございます。
    導入が未定とのことですが、
    ttps://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA12C6E0S5A111C2000000/
    こちらの記事ですと2020年後半に導入決定とあります。
    この記事が真実であれば源泉徴収から保険料を取ることに関するマイナス面や不公平、制度上の不具合、システム構築の難しさ、実際の実行にかかる複雑さを地方自治体に丸投げして政府としては実行するから勝手にしてという結論に達したように思います。
    健康保険の区分で取られる額が変化するのもおかしいですし(今でも健康保険、共済保険では住民税と所得税の申請区分を変えることができ、国民健康保険、後期高齢者医療保険ではかかる社会保険料の節税策は残ったままです)、何より地方自治体により取られる額が変化して不透明極まりなく、取られる方はどのような計算で取られたか、損益通算はどうなるのか、確定申告した分の源泉徴収の扱いや、細かな源泉徴収はどうなるのか等、取る場合は厳密な収支報告書を住民に自治体は提出する必要も出てくると思います。その上で住民は確定申告を行うか判断しないと複雑すぎてわかりません。地方自治体の事務負担はもう限界で基礎控除も上げられず実質破綻していますからこの上このような負担は無理だと思われますから、無理にこのような源泉徴収から暗黙で社会保険料を取ってしまうと無政府状態の実質社会保障の崩壊に繋がりかねません。
    私は一応ITのスペシャリスト免許保持者ですので書きますが、政府はIT基盤でなんでもできると言いますが、完全でない電力や漏洩、サイバー攻撃、不具合に左右される不完全で不安定なものであるであることを認識すべきで、源泉徴収のシステム基盤が複雑で実現可能化も含め簡単に構築できると安易に考えるべきでありません。
    これからAIによるコーディングも入ってきて企業の効率化推進により人間によるコードの把握は不完全で不具合発生時の対応はますますブラックボックス化長期化することが予想されています。もしかしたらシステムが復旧できない可能性もあります。AIはクラウドに依存するので漏洩も酷いものになるのは確実です。
    源泉徴収の意味を考えてほしいです。簡素にするための仕組みのはずです。
    国が源泉徴収した税金から社会保険料補助をしているのだから地方自治体に社会保険料徴収を丸投げするのは問題を複雑化させると思います。
    一度実行してしまうと取り返しがつかない事態になりかねない可能性があります。
    それに、一部とは言え国民の生活が破綻する可能性がある制度です。
    住民税と所得税の申告区分を分ける節税策が国民健康保険で禁止されたときにもそうでした。
    その人たちの人権はどうなるんでしょうか。私はここの議論がまったくされず、まるで存在しないない人のように扱われているのが一番気になっています。

    • kotori より:

      通りすがり様
      この度は大変丁寧で深いご意見をいただき、誠にありがとうございます。

      また、日経記事の情報共有も併せて感謝申し上げます。
      ご指摘のように、制度導入そのものは「政府として方向性を打ち出した段階」である一方、実際の運用に落とし込むまでには、地方自治体・健康保険組合・税務システムなど多方面で解決すべき課題が非常に多く、まだ “実務的に実行可能な状態” までは至っていないという状況だと私も認識しております。

      とくにご指摘にあった、

      ・自治体によって保険料が変わる不公平性
      ・制度の複雑化
      ・損益通算や確定申告との整合性
      ・源泉徴収という仕組み本来のシンプルさの喪失
      ・システム構築・運用におけるリスク
      ・IT基盤の不完全性から生じる障害やセキュリティ問題
      ・生活に直結する国民への影響

      これらは、制度を導入する上で避けて通れない重要な論点でありながら、現時点では政府・自治体ともに十分に議論されているとは言えない部分が多いと感じています。
      特にITインフラや自治体の事務負担に関しては、現場の視点が抜け落ちると制度そのものが破綻する可能性があるというお話は、その通りだと思います。
      ご専門の立場からのご意見は非常に参考になりました。

      本記事としては、現時点では「正式決定・具体的な実施時期が確定しているわけではない」という立場でまとめておりますが、読者の皆さまに制度の影響を正しく伝えるためにも、今後の続報・政府の発表内容を注視しながら、記事も適宜アップデートしていきたいと考えております。

      貴重なご意見を丁寧にお寄せいただき、心より感謝申し上げます。
      今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

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